【広告業界の業務】広告営業に必要なのは「思いやり力」!?

広告業界に限ったことではないと思いますが、できる営業マンは皆、「思いやり力」が非常に高いと感じます。

かくいう私も、この能力がなかなか身に付かず、今でも苦労を重ねています。

 

広告業は売り物の値段が決まっている訳ではありません。明確なモノを売る訳ではなく、ある時は広告グラフィック表現であり、ある時はブランド広告の戦略プランニング費だったりする訳です。また、タレントさんを使って広告をしたりしますが、時流によってタレントさんの価値は変動します。(例えば、「ゲッツ!」で有名になったダンディ坂野さんの価値は、3年前と今では全然違いますよね笑。)要は、それが妥当な金額であるかどうか。が非常に曖昧な業界なんですね。

 

だからこそ面白い訳ですが、クライアントさんを説得するには大変なセンスを必要とします。同じプランを提案していても、担当営業によって天と地ほどの差が出てきます。

 

簡単な一例を紹介しましょう。

ある案件で、見積もり交渉時に「高い!」とクライアントが仰ったとします。

営業Aさんは社に持ち帰って、担当スタッフ(クリエイティブ・戦略・プロモーション等、案件に携わった人々です。)に「金額を下げるにはどうしたら良いか」という相談をしますが、

営業Bさんは現状なぜクライアントが「高い」と思っているかを分析し、まず「それ相応の価値がある」と認めてもらうにはどうしたら良いのか。から考えます。

 

両者の歴然たる違いがわかりますでしょうか?

 

一番の違いは、「クライアント視点」に一度立っているか、いないかです。

クライアントの「高い!」には理由があるはずです。過去実績と比較してそう思っているのか、社の予算割り振りの事情が変わったのかもしれませんし、あるいはクライアント内部での上申に際して、説得する自信がないのかもしれません。先方に知見が無く、肌感覚で「高い!」と感じているのかもしれません。

 

そこを考えてあげないと、真のビジネスパートナーにはなれません。ただ値引き交渉をしてくる、無理難題を言う困った人だ!で終わらせるべきではないのです。(中には出世しか頭に無く、安く仕切ったことで社内評価を求める人もいるみたいですが、どの道そんなやり取りをしているとビジネス関係が崩壊します。)ビジネスをする上では、真っ当なやり取りをきちんと手順を踏んで取り付けてくるべきです。

 

また、社内スタッフからの反応も天と地ほども違うでしょう。

恐らく営業Aさんはスタッフ全員から嫌な顔をされます。何故価格を下げるべきなのかもいまいちよく分からないため、スタッフも困ってしまいます。(スタッフも向き合っている関係会社に価格相談をしないとならないのです。)

反対に営業Bさんは、クライアント立場を考え、一度クライアントにヒアリングし、事情を理解した上で、スタッフに相談します。なので相談事項はより明確になっているはずです。

例えば、「先方社内事情で、広告予算が当初よりも減ってしまいそうで、プラン全体の予算減額を相談されている。優先順位として、ブランド戦略上、広告グラフィックの質は担保したいので、広告露出とプロモーション部分の予算を削りたい。また、実はクライアント担当者がプロモーション部分の経験が浅く、どのくらいの金額が妥当なのか分かっていないようなので、他案件での実例を出して金額の妥当性を説明する必要があるので協力して欲しい」といった具合です。

 

営業Aさんはその後、複数回クライアントと交渉を重ねて挙げ句不満が溜まっていくという現象になりかねません。クライアントが何で困っているかの本質が分からないので、当たり前ですね。デートでステーキが食べたいな!と思っている女性に、中華・和食・ラーメンと手当たり次第提案しても逆効果ですね。さらに言うと、もしかすると女性はステーキが食べたかったのではなく、記念日だからいい雰囲気のレストランで一緒に食事をしたかっただけのかもしれません。ニーズをきちんと把握した上で何を提案するべきか決めるべきなのです。

 

このように、日々の信頼関係はこのような相手の立場になってみて考える、「思いやり」の積み重ねによって築かれていくように思います。ほんの少しの差かもしれませんが、結果を見れば歴然とした差になっています。この「思いやり力」が身に付けば、どこに行っても通用すると思いますし、大きな対価を生む事ができるでしょう。広告営業には自分たちが出すソリューションが、きちんと相手に満足してもらえるのかという客観的視点が必要なのです。